24日、夢ちいき県央塾フォーラムが主催した県央工野球部、鈴木春樹監督(37)の今夏、甲子園大会への道のりを語るトークイベントが中央公民館で行われた。 会場には約二百人程の高校野球ファンや柴山元県高野連理事長(64)も訪れていた。 鈴木春樹監督は長岡大手高から順天堂大で中堅手として活躍し、1994年に中越高のコーチとして甲子園ベスト16、1995年羽茂高に赴任、1999年に柏崎高に異動し2003年に春の選抜に21世紀枠で甲子園出場、2007年に県央工に異動となり、今年の夏に三条市から初の甲子園出場を果す見事な快挙を果した。 三条市の高校野球レベルは1975年三条高がベスト4へ進出以来、33年間にわたり、まったくお粗末で長岡勢にいつも完敗していた。 その原因の一つはきびしい指導者が現れなかった事が上げられる。 2005年夏に県央工がベスト8へ進出した。当時の高村監督(現部長)がようやく甲子園を狙えるチームを作りあげたが、昨年は初戦で三条勢四校がすべて敗戦する惨めな結果だった。県央工は鈴木監督に代わり、冬場に1000mダッシュを10本もするなどして下半身を強化した。春には奈良県へ遠征して経験を積んだ。圧巻は野手2、3人が各ポジション別に800から900本ほど受けて総計が1万本にも及ぶ個人ノックである。それから実戦形式によるパーフェクトノックでは一人でもエラーしたら練習が終わらないというメニューがあり、保護者も選手達も泣きながら応援していたそうである。 県内で1番恐い監督と自負する鈴木監督は、明訓や文理を倒すにはそこまでするかという位の厳しい練習をさせた。 それを乗り切った選手達を監督は褒めるそうだ。その最高のご褒美が甲子園出場という栄誉なのである。 頑張らなかった学校には絶対に甲子園出場はありえないと私は思う。 三条市内の高校野球部に今迄足りなかったのは精神野球論だ。私の高校時代も監督からの鉄拳制裁などはなく、今の県央工の練習量に比べたら楽すぎた。だから3回戦で負けた。 今回の甲子園出場で、三高、商業、東高が県央工に追いつこうとするかは、監督さんのがんばり次第である。 さて鈴木監督の父親は中越高校で2002年に定年退職するまでの38年間監督を務められ、県内最多である7度の甲子園出場を果たした鈴木春祥(65)さんである。 1967年今井雄太郎(元阪急)を擁し北越大会まで進出するも富山商に7対0で負け、1969年は北越大会決勝で富山北部に1対0で負けて甲子園は実現できず、1県1校となった1974年は決勝戦で黒田監督の長岡商に負けた。 1977年は3回戦で現六日町高若井監督が捕手で出場した六日町高と対戦。自らのスカウト活動で手に入れた三本投手が熱を出して先発をはずれ、荒木投手(2年)を起用したのが裏目に出て初回に2点を献上してしまった。 2回表から三本投手(2年)を登板させたが、六日町高は9回表に一死一、二塁からダブルスチールの奇襲をかけ、中越の小林捕手(2年)が三塁に悪送球する間に決勝点をあげ3対2で負けた。実はこの小林捕手は私の中学の2年後輩である。 事件はこの夜に起きた。鈴木監督の家に中越高のOBや父兄が「お前じゃ甲子園は無理だ、マージャンばっかしてっけ駄目らんだ。監督をやめろ」と抗議に押しかけて来た。電話も鳴り止まず家は騒然としたという。 春樹監督は小学校1年生で、この様子を見て父の職業は大変な仕事なんだなあと実感する。 鈴木監督は三本投手でもう一年やらしてほしいと校長に嘆願し、新チームは猛練習を重ねた。秋の北信越県大会では長岡商に準決勝で負けたが北信越本大会では決勝戦まで進み福井商に負けて準優勝に終わる。 この年、選抜は北信越枠が二校から一校に減らされ中越はまたしても甲子園を逃す。ちなみに福井商は選抜で準優勝する大活躍を見せた。 年が明けた1978年、中越高は春の北信越県大会に初優勝し、本大会でも七尾工(石川)を破り悲願の初優勝を果した。 春樹少年は小学2年生で母親といっしょに自転車で長岡から水原(母の実家)まで父の甲子園出場を願かけに走ったそうである。 最後の夏を迎えた三本投手の左腕は6試合で1失点とさえわたり、守備陣も無失策で抜群の安定感をしめし、古豪新発田農を押さえ遂に鈴木監督は就任13年目で甲子園初出場を果した。 小林捕手も三条市からの甲子園初出場選手となり、1年前の悪夢を取り払った彼と、私は鳥屋野球場で赤いタオルを投げ入れ、がっちりと握手を交わした。 以後、中越は夏5回甲子園に出るも初戦敗退が続く。 1994年夏、出場6回目にして遂に穐谷投手を擁し坂出商業(香川)に2-1と勝利する。監督就任から30年目に初勝利した鈴木監督の涙に私は感激した。 2勝目はすぐにやって来た。優勝候補の浦和学院戦に1-0で9回サヨナラ勝ちという金星を挙げ、3回戦まで進出したのである。 この時、浦和学院の練習を視察した春樹コーチはその鉄壁な内野陣に驚愕し、中越の勝ち目はないと父に告げたそうだ。 1996年、7度目の甲子園出場を果し儀同主将が選手宣誓を務めるも、倉敷工(岡山)に9対0と完敗した。 2002年に鈴木監督は脳梗塞を発症し、懸命のリハビリで最後の夏の県大会で采配を振るったが、準決勝で日本文理に敗退し、59歳で監督を辞任した。 私は中越高のOBではないが、あの日のゲーム後にこんな出来事があった。 試合後、球場で監督の胴上げがあり、鈴木コールが沸きあがった。球場内の廊下ではぐったりとした監督が、椅子に腰を降ろして新聞記者の質問に、やっとで答えている。 もう体力の限界が見えていた。私はそんな監督を懸命に撮影していた。そこへ柏崎高の春樹監督が父へ「ご苦労様でした」と握手を交わしに来て労をねぎらった。 父の野球バックを持ち、球場の外へ出ると家族が出迎えていた。そんな鈴木一家を私はスナップした。 そこへ着替えを終えた日本文理の大井監督がやって来て、鈴木監督に言葉をかけた。「鈴木さん、あんたが新潟の高校野球の歴史を作ったんだ。明日の決勝戦は絶対負けない。もし文理が負けたらあんたに申し訳ない」と誓い柏崎工に勝って甲子園出場を果した。 球場を去る鈴木監督を私は追いかけてサインを求めた。 そこで自分はなんと言うことをしてしまったのかと自己嫌悪に落ちた。監督は立っている体力もなかった。「どっこいしょ」と駐車場のアスファルトに座り込んでしまったのである。 震える手で「中越高野球部監督、鈴木春祥」と書いて頂いた。半身麻痺が残る体の監督にサインをねだるなんて、私はなんというひどい事をしたのだろうと思った。 もらったサインは私の宝物の一つとなっている。今度鈴木監督にあったらあの時は失礼な事をしましたと謝りたい。 話を春樹監督のトークイベントに戻そう。最後に質問がある方はと聞かれ、私はこんな事を聞いてみた。 これから県央工が2度、3度と甲子園を目指すなら選手集めは重要な課題である。 今年燕中学が北信越軟式野球新人戦で優勝したがどのように県央地区の有望な選手を集めるのか? まず学校を良くしたいと春樹監督は語った。私立と違い簡単に選手は集められないが、学校が良くなればいい選手も入学してくる。決して野球学校にはしたくない考えらしい。 もう一つ、柴山元県高野連理事長が会場内にいたのがわかったのであえて、教育委員会の人事について苦言した。 新潟の高校野球が弱いのは大学出たての20代、30代の現役バリバリの指導者が教員になっても、野球部のない学校や自分の母校にすぐに赴任できない事、またせっかく野球部の礎を築きながら5、6年で異動させらりたりしている事だと説いた。 六日町高を甲子園に導いた勝監督は今、高校野球を指導していない。こんな人事はおかしいのでなはいかと思うのである。 春樹監督は最初、羽茂高に赴任した。だが母校の長岡大手高なら初年度から甲子園が狙えたかもしれない。 こんな遠回りする人事がいつまでも続く限り、新潟県はいつまでたっても甲子園では優勝できない。 柴山監督が異動してから長岡高は甲子園が実現していない。何故その功労者を追い出すのだろうか? 福井商の北野監督は30年以上も同じ学校で指導している。 さすがに春樹監督も答えにくそうで新聞に投書でもして下さいとあっさりかわされた。 まあ、来年の夏、再び三条市から甲子園出場が出来ることを期待して監督さん達には頑張ってもらいたいです。 Canon EOS30D EF300mmF2.8L USM F5.6 1/500秒 ISO400 9:58 晴れ 撮影日 2008.7.22 撮影地 三條機械スタジアム・準決勝・日本文理高戦 CanonEOS-3 EF27-70mmF2.8L USM F5.6 オート +1/3補正 RHP-Ⅲ 撮影日 2002.7.27 撮影地 新潟市鳥屋野球場 良かったらここをクリックして下さい。
by chonger48
| 2008-11-30 16:25
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